2011年度　第7回　細胞生物学セミナー

日時：7月19日(火)　16:30～

場所：総合研究棟6階　クリエーションルーム

The relationship between profiles of plagiogravitropism and morphometry of columella cells during the development of lateral roots of Vigna angularis

Kuya, N., Sato S. (2011)

Adv. Space Res., 47: 553-562

アズキの側根の生長過程における傾斜重力屈性の特性とコルメラ細胞の形態の関係性

　高等植物における重力屈性はシュートや根の生長方向を制御し、それによって植物の一般的な外観を決定している。被子植物の根系において、一次根は重力に応答して重力ベクトルの方向に向かって屈曲し（正規重力屈性）、一方で側根は重力ベクトルから逸脱した方向に生長する（傾斜重力屈性）。正規重力屈性はよく研究され、そのメカニズムは分子、細胞レベルの両方から包括的に理解された。しかし、側根の傾斜重力屈性を誘導するメカニズムについてほとんど分かっていない。

本研究はアズキの側根の生長過程において重力反応がどのように変化しているのか、側根の重力反応の修正に根冠、コルメラ細胞そしてアミロプラストの特性が関係しているか否かを調査することを目的としている。

重力ベクトルによる一次根軸の傾きの大きさに関係なく、新たに出現する側根は重力ベクトルに従い一定の角度を保つ傾向があった。側根が一次根の皮層で成長する第一水平方向生長段階（ステージ1）、発生から約１ mmの長さになるまでの間の下向きに勾配をつけて生長する段階（ステージ2）、約１ mmから４ mmを超えるまでの第二水平方向生長段階（ステージ3）、その後の曲線を描いて下降する段階（ステージ4）といういくつかの生長段階の間に側根は何度か重力反応を変化させた。ステージ１において、アミロプラストが沈降するために十分な大きさに発達しているコルメラ細胞は完全には分化していなかった。しかしステージ1からステージ2への転換期には、細胞の末端部分に向かって沈降できるアミロプラストの発達が伴った。0から10 mmの長さの側根に比べて10 mm以上の側根に存在するアミロプラストは著しく小さかった。このことより一次根から側根が発生した後直ちにアミロプラストは急激に発達し、10 mm以上に生長する時、アミロプラストのサイズが次第に縮小したことが示唆される。このアミロプラストの縮小化はステージ3における弱い重力反応に部分的に関与している可能性がある。

　ステージ3から4の切り替えが根冠の長さ、コルメラ細胞の数、アミロプラストの発達に関係していることを示唆する証拠は示されていない。ステージ4の誘導においては、分子レベルにおける要因の方が細胞や組織のレベルの要因よりもおそらく有力なのであろう。

興味を持たれた方は、是非ご参加ください。　矢代　宇視